かなり使えない乾電池スペーサー

非常時の応急処置として、単三電池を単二形や単一形にサイズ変更して使用できる「乾電池スペーサー」という便利グッズがあります。

ところが、この便利グッズが以外と使えないので、何がどうなっているのかお伝えしたいと思います。

まずは乾電池の規格について ”乾電池使用機器の電池室・端子 安全設計ガイドブック” というキーワードでググってください。

ガイドブックについて、直接PDFファイルのリンクからダウンロードするか、一般社団法人 電池工業会のホームページからダウンロードすることが出来ます。

一通り目を通していただくと、とても興味深い内容で、たかが乾電池と侮るなかれ、緻密な設計のもとに製造されていることが理解出ると思います。 最近言われることが無くなってきましたが、外国製の乾電池はよろしくないと言われた所以は、品質の悪さ以外にも、規格に準じて製造されていないことが多々あり、トラブルが多発していたためです。

ガイドブックの26ページに 5.付録 5.1 乾電池の形状と外形寸法 という資料があります。

付表1 円筒形乾電池の詳細寸法 を比較してみると、それぞれ厳密な寸法が異なることがわかります。

乾電池スペーサーを使用する場合、特に問題になるのが、正極端子の出っ張り”G”の長さです。

数値ではわずかですが、現物を比較してみると結構差があることが確認できます。

単二電池と単三電池の正極端子の比較です。

 

ほぼ知られていないみたいですが、非充電乾電池とエネループでは、見てもわからない程度の違いがあります。

単三形でアルカリ乾電池とエネループの比較です。

エネループでも旧型と新型ではミリ以下の差があります。

これくらい

乾電池スペーサーに入れてみると、正極端子の出っ張り長の違いが結構致命的だったりします。
左がダイソー、右がホームセンターや家電量販店で見かけるものです。

このように正極端子がほぼ出なくなります。

それがどうしたかと言うと、先程のガイドラインにも記載されていますが、真面目な電池ケースは「逆装てん通電防止構造」という、事故防止対策がされていることがあります。

写真ではわかりにくいですが、電池ケースの正極端子に、乾電池の負極端子が接触しない構造になっているため、乾電池スペーサーを使用すると、正極端子が届かないことがあります。

実は正極側だけでなく、負極側についても、バネの形状によっては接触しないことがあります。

特にエネループは正極端子の出っ張りがそもそも短いので、Panasonic純正のスペーサーを使用すると、比較的使いみちが広がります。

正極端子もはっきりと顔を出しています。

負極側もしっかりと接触出来るように出っ張っています。

このスペーサー、実はエネループを始めとした充電式電池専用です。

製品の説明不足ですので、注意書きにちゃんと理由を書くべきだと思います。

乾電池とエネループでは本体のサイズが異なります。そのため乾電池に使用すると負極側が引っ込んでしまいます。致命的な問題ではありませんが、このスペーサーを使用すると、JIS,IEC規格から外れてしまう可能性があります。

 

エネループは電池容量を確保するために、本体寸法を規格いっぱいまで使っているため、この様な一見しただけでは判別できないほどの違いが発生しています。

電気を甘く見ると非常の恐ろしいことになります。 乾電池で感電する可能性は低いと思いますが、機器を故障させることは少なくありません。 間違った使用方法で火災につながる可能性があります。

規格というのは意味があって存在しています。規格に従って使用するのが大原則ですが、この様なイレギュラーグッズを使用しなくてはならない場合は、用量・用法をよくお確かめの上 使用上の注意事項をよく理解してからご利用ください。